
2020年に食事摂取基準が改訂されました。
食事摂取基準は5年ごとに改訂され、それをもとに管理栄養士や栄養士の皆さんは献立を作成したり、栄養指導をしていったりします。
そのため、食事摂取基準は管理栄養士、栄養士のバイブルともなるもので、国家試験にも出題されます。
特に気を付けないといけないのが、改訂された年の試験です!
今回、2020年の改訂だったので、2021年3月に行われる国家試験に改訂された部分などの出題がされる可能性は高いでしょう。
管理栄養士養成校の皆さん、既卒で管理栄養士免許取得を目指す皆さんの中には、食事摂取基準が改訂されたことは知っていても、何が変更されたのか、改訂のポイントは何なのか把握できていない方もいらっしゃると思います。
そんな方のために、食事摂取基準2020改訂のポイント、国家試験に出題されそうなことを解説していきます!
今回の記事は、栄養疫学で有名な「佐々木 敏」先生が食事摂取基準2020の改訂について講義をされたのを実際に聞いたことをもとに書いていますので、重要なポイントがつまっています!
まだポイントを押さえていない人はぜひ読み進めてください!
食事摂取基準の構造
改訂のポイントを見ていく前に、食事摂取基準の構造とその中でどの部分が変わったのかをつかみましょう!
食事摂取基準は、下の図のように大きく総論と各論の2つで構成されています。
変更されたポイントは以下の通りで、赤枠で囲っています。
- 総論:策定方針、策定の基本事項
- 各論:対象特性、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連

総論の改訂ポイント
策定の方針
策定の方針のキーワードは「高齢者の低栄養予防・フレイル予防」です。
2025年問題と言われるように、日本はこれからどんどん高齢化が進んでいきます。
高齢者が増えると医療費も増加していきますが、それを少しでも抑えるために、元気な高齢者を増やす必要があります。
そのために、今回の改訂では高齢者の低栄養およびフレイル予防のための目標量が設定されています。
そして、50歳以上の年齢区分に関しても、高齢者を意識した変更が行われています。
- 2015年版:「50~69歳」「70歳以上」
- 2020年版:「50~64歳」「65~74歳」「75歳以上」
というように区分が細かくなっていて、65歳以上が高齢者とされています。
ただ、年齢区分が細かくなるということは、その年齢の方に対する研究が少なくなり、価の信頼性は落ちることに注意しないといけません。
また、対象とする個人及び集団に、フレイルに関する危険因子を有している高齢者が追加されました。
フレイルは統一された概念が現在のところ存在していませんが、食事摂取基準においては健常状態と要介護状態の中間にある段階を対象としています。
策定の基本事項
2020年は根拠に基づく政策立案(EBPM)の推進を行っていくと明言されいます。
EBPMとはEvidence based Policy Makingの略で、根拠に基づいた栄養政策を進めていくことを目指しています。
目的を明確にして、その目的のために効果のある手段を考え抜くようにしようという動きになります。
そのために、目標量を設定している栄養価に関してはエビデンスレベルが記載されるようになりました。
佐々木先生いわく、食事摂取基準にエビデンスレベルを記載することは、世界で初めての試みのようです!
エビデンスレベルが記載されるということは、活用する人がそのレベルを読み解き、しっかりと活用していくことが求められているということになります。
目標量が算定されている栄養価のエビデンスレベルは下の図のようになっています。
エビデンスレベル | 数値の算定に用いられた根拠 | 栄養素 |
D1 | 介入研究又はコホート研究のメタ・アナリシス、並びにその他の介入研究又はコホート研究に基づく | たんぱく質、飽和脂肪酸、食物繊維、ナトリウム(食塩相当量)、カリウム |
D2 | 複数の介入研究又はコホート研究に基づく | – |
D3 | 日本人の摂取量等分布に関する観察研究(記述疫学研究)に基づく | 脂質 |
D4 | 他の国・団体の食事摂取基準又はそれに類似する基準に基づく | – |
D5 | その他 | 炭水化物 |
各論の改訂ポイント
各論の変更された部分である、対象特性、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連に関しては、2015年版では参考資料とされていましたが、2020年版では各論の一部となりました。
対象特性は総論でもお伝えした通り、フレイルに関する危険因子を有している高齢者が追加されています。
生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連は各論の一部となったことで、より食事摂取基準との関連性を考えて、指導や予防をしていくことが求められています。
生活習慣病予防にかかわる方々は要注目ですね!
各論はそれぞれの栄養素の摂取基準や考え方、活用にあたっての留意事項が記載されています。
各論の中の細かい変更点については、ここで書くと長くなってしまうため、別の記事で紹介したいと思います。
国家試験に出題されそうなこと
国家試験を受ける方にとっては、何が出題されるのかということが気になるところですよね。
ここからは、佐々木先生の講義を受けて、総論の中で私なりに出題されそうだなと感じたところをピックアップしていきたいと思います。
総論は食事摂取基準の根本となる考え方であり、2020年版では「高齢者の低栄養予防・フレイル予防」が加わったことが大きなポイントです。
これが加わったこと、加わったことによる影響、栄養士・管理栄養士が考慮しなければならないことが出題される可能性が大きいと感じているので、しっかり頭に入れておきましょう!
まとめ
食事摂取基準2020版の改訂の中でも、総論に絞ってポイントをお伝えしました。
今回の記事では、変更されたポイントをまとめましたが、それ以外にも変更されていないことも大事です。
なぜなら、変更されない=それだけ大事ということと捉えられるからです。
なので、食事摂取基準の基本は抑えつつ、2020年版では何が変わったのか、何が変わらなかったのか、この視点で勉強しておくとよいと思います。
国家試験の勉強法については、こちらのページも参考にしてください!
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